対象にとる・選ぶ
遊戯王のルールでつまづきやすいもののひとつ、「対象にとる」と「選ぶ」について解説します。
他のカードゲームも何個かかじっていますが、「対象にとる」と「選ぶ」は遊戯王独特の表現のような気がしますね。
「対象にとる」も「選ぶ」も日本語的には意味が一緒だし、日常生活に当てはめてもまるで意味が分からない。
そんな人がこの記事を読んで少しでも理解が深まれば幸いです。
対象をとる(指定する)効果
遊戯王カードWiki
対象を取る効果とは、効果を与える目標を選択して発動する効果の事を指します。
不特定のカードに効果を与えるものや、効果の処理時に目標が決定される効果は「対象を取る効果」ではありません。
(公式ルールブック マスタールール(2020年4月1日改訂版)対応 バージョン 1.0 P85 より引用)
「対象にとる」とは?
「対象にとる」とは、その文字の通り「特定のカードを指定して発動する効果」を指します。
具体的なテキストで言うと、「~を対象に発動する。」という文言が記されているもの。
例えばサイクロンや強制脱出装置などの除去カード、装備魔法やヒュグロの魔導書などの特定モンスターを強化するカードは、だいたい対象を取る効果となっています。
エフェクト・ヴェーラーなんかも対象にとる効果を持ったカードですね。
例えば日常生活の出来事を遊戯王で分かりにくく説明するとすると、「対象をとる」とは、
「目の前にある1つ(または複数)のリンゴの中から特定のリンゴを指定し、持ち上げる」
と考えるとちょっと通じるでしょうか?
対象にとらない効果
では遊戯王のルールで「対象にとる」が何故問題になるかと言えば、それは「対象にとらない」処理があるからにほかなりません。
これにはざっくり分けて以下のようなものがあります。
対象にとらない例—「特定範囲に影響を与える・全体除去」
例えば特定の属性・種族・テーマを指定して強化するフィールド魔法や永続魔法・罠といったカードは基本的に対象をとっていません。
また、地砕きのように「フィールドで一番~なカードを破壊する」ようなカードも対象にとりません。
さらに、ライトニング・ストームなどの全体除去系のカード。
これも当然ながら対象を取りません。
このへんは肌感覚的にもわかるかなと。
対象にとらない例—「選ぶ」
厄介なのが「対象にとらずに『選ぶ』」カード。
こちらは一見対象をとっているように見えますが、実は対象をとっていません。
テキストでは、「選んで~」のような書き方をされています。
「対象にとる」と「選ぶ」を説明しようとするとちょっと難しいのですが、ざっくり言うと「効果発動時にカードを指定する」か「効果処理時にカードを指定する」の違いと覚えておくとわかりやすいかも。
例えば、対象にとるカードは「~を対象に発動する。」←効果発動時
選ぶは「~して発動する。~から選んで~する。」←効果処理時
となっているのがわかるでしょうか。
これが「効果発動時にカードを指定する」か「効果処理時にカードを指定する」の違いという訳です。
さっきのリンゴの例で言うと、
- 対象にとるは、「複数のリンゴの中から、特定の1つ(または複数)のリンゴを持ち上げる」
- 選ぶは、「複数のリンゴの中から、どれでも良いのでリンゴを持ち上げる(持ち上げるリンゴは何でも良い)」
という感じでしょうか。
厳密には違うかもしれませんが、とりあえずこれで覚えておけばだいたい大丈夫でしょう。
基本的には「対象にとる」でも「選ぶ」でもカードを指定することには違いがないので。
「じゃあ、何で選ぶでこんなに面倒くさい話をしてるの?」
ということになりますが、それはサクリファイス・エスケープ等の処理で大きく変わってくるからです。
詳しくは後述の『「対象にとる・選ぶ」のメリット・デメリット』項を参照。
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対象にとらない例—「誘発効果・罠カード」
対象にとらない例は「選ぶ」だけでなく、罠カード等の「特定の発動条件を満たした場合に発動する効果」もあります。
例えば優秀なカウンター罠である神の宣告のテキストは「自分または相手がモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚する際に発動できる。」とあり、これは対象にとっていません。
召喚・特殊召喚に反応する奈落の落とし穴も「相手が攻撃力1500以上のモンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。」とあり、こちらも対象にとっていません。
このように、一部の「特定の発動条件を満たした場合に発動する効果」は対象にとらずに効果を処理するものが多くある訳です。
ただし、全ての「特定の発動条件を満たした場合に発動する効果」が対象にとらない訳ではありません。
例えば、落とし穴は「相手が攻撃力1000以上のモンスターの召喚・反転召喚に成功した時、そのモンスター1体を対象として発動できる。」とあり、対象にとる効果です。
このへんは結局「~を対象に発動する。」の文言があるかないかで判断するしかないのですが、罠カード等は対象にとらない効果もある、と覚えておくといいでしょう。
遊戯王 20TH-JPC95 神の宣告 (日本語版 スーパーレア) 20th ANNIVERSARY LEGEND COLLECTION |
カードを発動するためのコスト/融合・儀式素材
さらにカードを発動するためのコストも対象にとる効果ではありません。
例えばサイバネット・マイニングの発動条件は「手札を1枚墓地へ送って発動できる。」ですが、これは対象をとっているわけではありません。
逆にスクラップ・ドラゴンの効果は「自分及び相手フィールドのカードを1枚ずつ対象として発動できる。そのカードを破壊する。」ですが、こちらは対象にとります。
どちらも自分に1枚のディスアドバンテージがありますが、対象にとっていたりいなかったりすることが分かってもらえたでしょうか。
こちらも肌感覚でなんとなくわかる範囲だと思いますが、一応紹介しておきます。
また、融合召喚や儀式召喚の素材となるカードも対象をとっているわけではありません。
よって、素材となるモンスターが効果処理時にいなくなったとしても、他に代替えできるならそのまま融合・儀式召喚ができます。
遊戯王 PAC1-JP047 サイバネット・マイニング (日本語版 スーパーレア) PRISMATIC ART COLLECTION |
「対象にとる・選ぶ」のメリット・デメリット
ここまでで「対象にとる」と「対象にとらない」がなんとなく分かってきたでしょうか。
ではここで、対象にとる・とらないのメリットとデメリットを考えていきます。
と言っても、「対象にとる」効果と「対象にとらない」効果を比較した場合、「対象にとる」効果にメリットはほぼありません。
大型モンスターの耐性と言えば「対象にならない」は一般的。
閉ザサレシ世界ノ冥神なんかは対象にとらない効果を受けない耐性を持ちますが、かなりの少数派となっています。
青き眼モンスターなど、一部に「対象にとられた時発動できる」カードがあるくらいでしょうか。
また、「対象にとる」効果には最大の弱点があり、それは「効果処理時に逃げられてしまう」こと。
これを非公式用語で「サクリファイス・エスケープ」と呼びます。
例えば、こちらの鳥獣族モンスターに対して相手が対象にとる除去カードを使ったとします。
このままではこちらのカードが破壊されてしまいますが、これにチェーンしてゴッドバードアタックを発動し、対象にとられた鳥獣族をリリースしました。
結果、相手は除去カードを無駄打ちして0対1交換(1枚の損)。
こちらはゴッドバードアタックのコストにして2対2交換、となります。
これがいわゆる「サクリファイス・エスケープ」です。
もっとわかりやすい例だと、PSYフレームロード・Ωはフリーチェーンで自身を除外できるため、対象にとろうものなら除外ゾーンに逃げて除去を受け付けません。(相手にやられるとけっこう腹立つ)
Kozmoも自身をリリースして後続を呼べるため、テーマレベルでサクリファイス・エスケープができるカードと言えるでしょう。
遊戯王は大半の除去カードが対象を取るため、サクリファイスエスケープができるとそれらを躱すことができるので有利。
また、基本的に手札しかリソースないため、サクリファイス・エスケープによる地道なアドバンテージの取り方はけっこう重要だったりします。
遊戯王/PSYフレームロード・Ω(スーパーレア)/レアリティ・コレクション─20th ANNIVERSARY EDITION─ RC02-JP025 |
一方、全体除去や「選ぶ」効果はこういったサクリファイス・エスケープに強いのがメリット。
狙ったカードがサクリファイス・エスケープされても、全体除去なら他のカードを巻き込み、「選ぶ」は別のカードを選択することができます。
この「選ぶ」について少し補足。
先にも書いたように、「選ぶ」というのは「効果処理時にカードを指定する効果」のことを指します。
ここにサクリファイス・エスケープの事例を当てはめると、
- 「選んで破壊する」効果を発動。(除去したいカードはあるけどまだ指定はしてない)
- 相手が効果でサクリファイス・エスケープ。(自分が除去したいカードがリリースされる)
- 自分が破壊したかったカードはなくなったけど、まだ破壊対象を指定してないので別のカードを破壊←おいしい
という感じ。
「対象にとる」カードだと対象不在で不発になってしまう処理が「選ぶ」だと不発にならないのがわかるでしょうか。
これが「選ぶ」効果最大のメリットです。
先ほどのリンゴの例で例えると、
「複数のリンゴの中から、どれでも良いのでリンゴを持ち上げる(持ち上げるリンゴは何でも良い)」
「ので、狙っていたリンゴがなくなっても別のリンゴを持ち上げる」
という感じ。
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対象をとるカードの特別な処理
最後に「対象にとる」カードの特別な処理について。
これは調べるまで知らんかった。
複数の対象をとるカードの処理
複数のカードを対象に発動する時、効果処理時に対象にとったカード全てに処理が適応できない場合、不発になるカードとならないカードがあります。
例えば貪欲な壺は「自分の墓地のモンスター5体を対象として発動できる。」ですが、5枚全部戻せないと不発。
逆にサルベージは「自分の墓地の攻撃力1500以下の水属性モンスター2体を対象として発動できる。」ですが、1体がD.D.クロウなどで除外されても1枚だけ回収することができます。
これは貪欲な壺の効果処理に「戻す枚数が指定されている」ため。
サルベージの場合は対象にとる枚数は指定されていますが、「回収する枚数は指定されていない」ため、1枚でも回収できる訳ですね。
対象耐性を付与するカードについて
遊戯王には安全地帯のように「相手の効果の対象にならない」耐性を付与するカードがあります。
しかし、対象にとる効果の発動にチェーンしても無駄なのです。
これは既に対象にとられた後であるため、チェーンの逆順処理をしても意味がないということですね。
具体的な例では、強制脱出装置の発動にチェーンして安全地帯を発動しても、既に対象にとられてしまっているため守ることができない、ということです。
似たような状況は禁じられた聖衣でも起こり、このカードが他の禁じられたシリーズより低く見られがちな原因であることを思い出しました。
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